りこぴた読書感想文と日記

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浅井リョウ(著)「桐島、部活やめるってよ」集英社文庫,集英社,2012. 桐島、部活やめるってよを読んで

 2012年に出版され、同年映画化されて面白いと話題になったので、原作を手に取ってみました。登場人物の映画を好きな気持ちや熱意や本気などに興味を持ちました。友達と映画について熱中して話し込み、きらきらと世界が輝き、その人の瞳も姿も輝くのに、あこがれ交じりで羨ましく思いながら読みました。作中の会話にも興味が惹かれました。ぽんぽんと流れる会話に、高校生ってこんな感じだったろうか?と、懐かしいというよりは新鮮でした。

 高校というモラトリアム真っただ中、クラス内のカーストが気になる登場人物たちが出てくる学園ものですが、それだけではなく大人も楽しめます。バレー部のキャプテン桐島が部長をやめることで周囲の学生たちに起こる小さな変化を描いています。桐島についてはほかの学生が思うことの描写だけです。17歳の青春群像です。

 一番心に響いたのは、前田涼也や武文の映画を好きな気持ちや熱意や本気を見て思う、燃えるもののない菊池宏樹が自身にいら立ち、野球部に復帰する描写です。

 「一番怖かった。本気でやって、何もできない自分を知ることが。」「立ち向かいも逃げることもできない自分を思い知らされる」真正面は無理。涼也や武文のひかりを背中で受け、サボり続けていた野球部へ復帰するのです。

 宮部未果の章も印象に残っています。母の気持ちを考えると言いたいことを(未果の場合は自分が自分であることという苛烈な内容ですが)言えないという、私も学生時代に味わったことがある苦しみです。

 宏樹の気持ちは私自身の今に重なります。私も、本気でやって何もできないのが怖いし、立ち向かいも逃げることもできない自分を思い知っているところなので、とても感慨深いです。大人になってから学園ものの登場人物と気持ちがシンクロするなんてと驚きと共に当惑もしています。私の場合も挑戦するしかありませんが。

 宮部未果は、一見そうは見えないのにとても無理していてすごく辛く、未熟故に判断を誤るという物語の流れもリアルに描かれていると思います。未果は母に「私はカオリではなく未果だ。」というべきだと思います。未果がかわいそうです。でも言わない判断をします。私も自身の母に、母のことを思って結局言いたいことは言わなかった強い思い出があるのでとてもリアルだな、と思います。未果の話には強烈なカタルシスがありました。

 この本を読んで、好きな気持ちや熱意や本気で挑戦することの大切さ、すばらしさ、美しさを改めて意識しました。カーストなど気にしても何もなりません。それより何かを本気で好きになり、熱意をもって挑戦することがとても重要だと思いました。日常に埋没して何かを好きになる気持ち、熱意、本気で挑戦することを忘れてはなりません。

 私はうつ病なのでこういった気持ちが起こりにくい状態です。長く療養する間に漫然と過ごしてしまいましたが、これではいけないと思いました。

 幸い、ここのところ読書が面白いと感じられるようになってきたので、読書が好きという気持ちを大切に熱意をもって本気で読書をしようと思いました。本を読むだけでなく、いろいろと挑戦をしていきたいと思います。何せ本気はひかり輝いて美しいのです。いつでも誰にでもそういう幸運が訪れてほしいものですが、実際はそうでもありません。本気で楽しめそうならばそれを大切にすべきです。この本で得たことは「好きなことを大事に熱意をもって本気でやる」ということです。これからいっぱい本を読んでいきたいと思います。